産業保健コラム|メンタルヘルス・健康経営

ストレスチェック、「集団分析」で終わっていませんか?
——19名の産業保健師に聞いた"その後"の実態と、貴社の活用度診断

産業保健師 永松希望|2026年7月

毎年のストレスチェック、集団分析の報告書はきちんと手元に届いている。安全衛生委員会でも報告した。——でも、そのあと職場は何か変わったでしょうか。

2025年の法改正で、ストレスチェックの実施義務は50人未満の事業場にも拡大されることが決まりました(公布後3年以内に施行)。「実施」の裾野が広がるいまこそ問われるのは、結果を職場の改善につなげる「その後」の体制です。

そこで今回、企業の現場を知る産業保健師19名に「集団分析のその後」を聞く実態調査を行いました。みえてきたのは、多くの会社に共通する2つの崖でした。

9割が「分析」している。活かせているのは2割

調査結果を、活用のステップ順に並べるとこうなります。

89%集団分析を実施
63%部署・管理職へ
フィードバック
42%高ストレス部署へ
ヒアリング

32%良い部署の
要因分析
21%良い事例の
横展開
21%翌年結果との
比較評価

「分析して委員会に報告する」までは、ほとんどの会社ができています。最初の崖は「職場に入る」ところ。数字を見て気になる部署があっても、実際にヒアリングまで行うのは4割です。そして第2の崖が「良い職場に学び、広げ、翌年につなぐ」ところ。ここまで到達しているのは2割程度——つまり大半の会社で、集団分析はPDCAの前半で止まっているのです。

現場からはこんな声も寄せられました。「対策が薄いので、年々回答率も低下傾向にある」。活用されないストレスチェックは、従業員の回答意欲まで下げてしまう——形骸化は静かに進みます。

原因は、担当者のスキルではありません

意外に思われるかもしれませんが、「分析結果の見方が分からない」と答えた専門職は、19名中わずか1名でした。いっぽうで最も多かった回答は「職場改善までつなげる体制がない」(11名・58%)。さらに約半数が「専門職としてどこまで関わるべきか迷う」と答えており、この迷いは経験10年以上のベテランでも解消していませんでした。

つまり課題は、個人の勉強不足ではなく、「いつ・誰が・何をするか」が会社として決まっていないこと。逆に言えば、体制さえ設計すれば動き出す、ということでもあります。

貴社の活用度を診断してみましょう(15問・約3分)

調査で使った項目をもとに、企業向けの簡易診断をつくりました。当てはまるものを選んで「診断する」を押すと、5つの領域のレーダーチャートで、調査19名がみた企業の実施状況(参考値)と比べられます。人事・労務のご担当者様は、いまの体制を思い浮かべながらどうぞ。

集団分析 活用度セルフ診断

回答は保存されません。安心してお試しください。

貴社の活用度は

/ 30点

貴社 調査19名の実施状況(参考値)

※参考値は「産業保健師19名実態調査(2026年7月)」の各項目実施率を6点満点に換算したものです。

うまく回している会社は、何が違うのか

調査では、実際に成果につながった取り組みも集まりました。共通していたのは、分析の精度ではなく「場の設計」です。

良い部署から、フィードバックを始める

結果の悪い部署への「指摘」から入らず、良好部署の工夫(グッドプラクティス)を先に集め、それを他部署へ紹介する。協力者が増え、横展開の素材も同時に手に入ります。

業務量を変えられなくても、関係性は変えられる

量的負荷も裁量も変えられない部署で、1on1に加えて日常の雑談を意識的に増やしたところ、同じ業務量でもイライラ・不安・抑うつの数値が改善した事例がありました。

トップが自分の言葉で語る

経営トップが管理職会議で結果を直接共有した会社では、管理職の優先度が変わり、潜在的なハラスメントリスクの早期発見・対応にもつながりました。

50人未満への義務化拡大は、「準備の締め切り」です

冒頭のとおり、ストレスチェックの実施義務は50人未満のすべての事業場に広がります。小規模な事業場には産業医の選任義務も衛生委員会もないため、「実施はしたが、活かす体制がない」状態が起こりやすい構造です。本体でいま活用の型をつくっておくことは、グループ全体・小規模拠点への何よりの備えになります。

診断の点数が低くても、心配はいりません。調査が示したとおり、それは貴社だけの状況ではなく、そして原因はスキルではなく体制——設計すれば変えられるものだからです。

「その後」の体制づくり、ご一緒します

集団分析の読み解きから、年間の活用サイクル・役割分担の設計、部署ヒアリングやフィードバックの伴走まで。
16年・6業界の現場経験をもつ産業保健師が、貴社に合った「活用の型」づくりを支援します。

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執筆: 産業保健師 永松希望
出典: 産業保健師19名実態調査(2026年7月実施・当方調べ)/厚生労働省「労働安全衛生法の改正について」