メンタルヘルス休職・復職人事労務向け2026.09

メンタル不調の社員が出たとき、人事は「1人で抱え込まなくていい」

執筆:産業保健師 永松希望|2026年9月9日

「今回はどうすればいいんだろう」から始まる

人事労務のご担当者で、総務や経理、採用など、ほかの業務と兼務されている方は多いと思います。

そんな中で、ある日、現場のマネージャーから「うちの部署の◯◯さんから急に休職の診断書が出たと言われました」と相談が入る。あるいは本人から「体調が悪くて、しばらく休みたい」「休職の診断書が出ました」と申し出がある。

そのたびに「今回はどう対応すればいいんだろう」と悩んで、自分の中で抱え込んでしまう。人事労務部長に相談しても明確な答えは得られず、部長も同じように困っている。

こうした状況、めずらしくありません。むしろ、多くの会社で起きていることです。

抱え込むと、何が起きるか

人事が1人で抱えてしまうと、いくつかのことが起きやすくなります。

まず、判断が遅れます。「もう少し様子を見よう」「本人が言ってくるまで待とう」と時間が経ち、その間に本人の状態は悪くなっていきます。

次に、休職がスムーズに進みません。診断書が出てから慌てて制度を確認し、本人への説明も後手に回る。現場の責任者との情報共有もばらばらで、「誰が何を伝えたのか」が分からなくなる。

そして、拗れやすくなります。本人は「会社に放っておかれた」と感じ、現場のマネージャーは「人事が動いてくれない」と感じ、人事は「私ばかり責められる」と感じる。誰も悪くないのに、関係だけがこじれていく。

これは、本人にとっても会社にとっても、良いことがありません。

一枚岩で対応する、ということ

では、どうすればいいのか。

私が産業保健師として16年、いろいろな会社で見てきて確信しているのは、メンタル不調への対応は「1人で何とかする」ものではなく、「関係者が一枚岩になって対応する」ものだということです。

メンタル不調の社員をめぐって、関わる人は意外と多いです。

それぞれに、その人にしかできない役割があります。

たとえば、日々の様子を一番近くで見ているのは現場のマネージャーです。医学的な判断ができるのは産業医。本人の気持ちや生活の状況を支えるのは家族。

そして、それぞれが自分の役割を引き受けることで、はじめて対応が前に進みます。逆に言えば、誰かが「全部やる」必要はないし、やろうとしても無理なんです。

人事が引き受けるべき役割は何か

では、人事労務が引き受けるべき役割は何でしょうか。

私は、大きく3つだと考えています。

① 制度の説明と手続きの担い手

休職制度、傷病手当金、復職の流れ。これらを正しく本人と現場のマネージャーに説明できるのは人事だけです。「制度がどうなっているか分からない」という不安を取り除くのは、人事にしかできない役割です。

② 会社としての判断を決める

いつから休職とするか、復職を認めるか、復職後に就業上の措置(残業制限や配置転換など)をつけるか。こうした「会社としての判断」を決めるのは人事の役割です。

ここで大事なのは、人事は医学的な判断をするわけではない、ということです。本人の病状や働ける状態かどうかを医学的に見立てるのは産業医。人事は、産業医の意見と現場の状況を踏まえて、会社としてどう措置するかを決める。役割がはっきり分かれているからこそ、「私が病状を判断しなきゃ」と抱え込まずに済みます。

③ 法的なリスクに備える

休職期間満了時の対応、復職を認めない場合の扱い、本人や家族とのやり取りの記録。メンタル不調の対応は、進め方を誤ると労務トラブルに発展することがあります。必要な場面で弁護士や社労士と連携し、会社を法的に守るのも人事の役割です。

逆に言うと、本人の病状を判断すること、現場のマネージャーの代わりに日々の様子を見て声をかけること、医学的な見立てをすることは、人事の役割ではありません。ここを引き受けようとすると、抱え込みが始まります。

役割分担は「誰かが設計する」必要がある

ここまで読んで、「役割分担が大事なのは分かった。でも、うちの会社でそれをどう決めればいいのか」と思われたかもしれません。

そうなんです。役割分担は、自然にはできあがりません。誰かが「この会社では、誰が何を引き受けるか」を設計して、関係者と共有しておく必要があります。

そして多くの場合、それを設計する立場にいるのが人事労務です。ただ、兼務の中でその設計まで1人で行うのは、正直かなり大変だと思います。

私は産業保健師として、この「役割分担の設計」を人事の方と一緒に行うお手伝いをしています。いきなり大きな仕組みを作る必要はありません。まずは「うちの会社では、メンタル不調が出たときに誰が何をするか」を1枚にまとめるところから。

「今の対応で合っているのか分からない」「毎回バタバタしてしまう」という段階でも、お気軽にご相談ください。

CONTACT

お問い合わせ・ご相談

メンタル不調対応の役割分担づくり、休職・復職の体制整備など、貴社の状況に合わせてご一緒します。

お問い合わせ・ご相談はこちら

産業保健師 永松希望

← ブログ一覧に戻る